日本学叢書 4
アジアの女性身体はいかに描かれたか 視覚表象と戦争の記憶
アジア・太平洋戦争時、アジアの女性身体にはどのようなまなざしが注がれたのか。また、女性美術家はどのような活動をしたのか――100点を超える絵画・写真から、アジアの女性たちを取り巻いていた植民地主義やジェンダーの力学を浮き彫りにする。
目次
“世界のどこかで私を待っている人”へ――「日本学叢書」刊行にあたって 川村邦光
はじめに 北原 恵
第1部 女性美術家は帝国日本をどう生きたのか
第1章 戦時下の日本の女性画家は何を描いたか――長谷川春子と赤松俊子(丸木俊)を中心として 小勝禮子
1 一九三七―四一年、日中戦争期の女性画家
2 長谷川春子の履歴と戦時下の「従軍」活動
3 新発見された長谷川春子の戦時下の絵画三点
4 女流美術家奉公隊結成とその活動
5 赤松俊子(丸木俊)の戦時下の活動
第2章 戦争下の美術家・長谷川春子――《ハノイ風景》(一九三九年)の絵を中心に 北原 恵
1 長谷川春子の「移動」と戦時下の足跡
2 絵画《ハノイ風景》(一九三九年)
3 一九四〇年~国内での活動へ――女流美術家奉公隊
4 境界侵犯と象徴秩序の回復――女性戦争画家の戦後
コラム イトー・ターリ 嶽本新奈
第2部 植民地と/の女性表象の政治性を問う
第3章 日本統治下の植民地の美術活動 ラワンチャイクン寿子
1 植民地の官設美術展覧会
2 地方色の両義性
3 同質性――近代性の一つのありようとして
第4章 植民地期韓国のモダンガールと遊女 金惠信
1 モダンガール――新たな伝統の器
2 遊女の表象――よみがえる古
第5章 近代化のための女性表象――「モデル」としての身体 児島 薫
1 近代化と裸体画
2 「伝統服」の女性像による自己表象
3 「東洋」の表象としての女性像の創出
4 日本人画家の台湾先住民女性像
コラム ユン・ソクナム 小勝禮子
コラム レベッカ・ジェニソンとの「上空対談」 嶋田美子
第3部 「慰安婦」表象は戦争の記憶をどう語るか
第6章 古沢岩美が描いた「慰安婦」――戦争・敗戦体験と「主体」の再構築 北原 恵
1 パンパンと原爆の表象
2 朝鮮人女性・妓生
3 中国戦線での慰安婦表象
4 《なぐさめもだえ》
第7章 日本映画にみる〈在日〉女性と朝鮮人〈慰安婦〉、その声の不在 高 美哿
1 日本映画における在日女性表象
2 『日本春歌考』
3 映画のなかの慰安婦表象
コラム アルマ・キント 中西美穂
終 章 ジャガイモの花 琴仙姫
研究動向 植民地時代美術を中心にした韓国近代美術研究の動向 金容澈