朝露 Morning Dew

2023

編著:琴仙姫(クム・ソニ)

共著:竹川宣彰、山本浩貴、高川和也、毛利嘉孝、岡田有美子、近藤健一、松村美穂、鄭 暎惠、島貫泰介、レベッカ・ジェニスン、笹山大志、崔 敬華、李 静和(掲載順)

出版:アート専門出版社「アートダイバー」細川英一

ページ:256ページ(カラー64ページ)

製本:並製本

サイズ:四六判(188×130mm)

デザイン:山城絵里砂

会場撮影:笠間悠貴

ISBN:978-4-908122-19-4

2023年3月中旬刊行

日本に住む脱北した元「帰国者」と アーティストとの共同プロジェクト「朝露」。本書では、2020年の展覧会で発表された作品とその記録を起点とし、外部の寄稿者による「朝露」プロジェクトへの応答を幾重にも編みながら、ディスカッションの輪を広げていくことを試みる。

魂の長い夜を明かし草葉に宿る

真珠より美しい朝露のように

心に悲しみが実るとき

朝の丘に立ち微笑みを学ぶ

『朝露』 歌詞より

訳:李 政美

作詞:金 敏基

「朝露」とは、1980年代に韓国の学生運動で歌われた歌のタイトル。夜を経て純粋で美しいものに生まれ変わることを象徴している。

アーティスト琴仙姫(クム・ソニ)によって企画された「朝露」は、「元「帰国者」」をテーマとしたソーシャリー・エンゲイジド・アート(SEA)・プロジェクトである。

1950年代から80年代の「北朝鮮帰国事業」において、延べ9万人を超える在日朝鮮人が、当時「地上の楽園」として報道された幻想を信じ、北朝鮮へと「帰国」した。しかし、彼ら「帰国者」を待っていたのは、深刻な貧困や過酷な生活であった。独裁体制の下で日本からの数多くの「帰国者」が不明確な理由で強制収容所に送られ、命を落とすこともあったという。この出来事は、いまだに解決されていない東アジアの歴史問題として残っている。その北朝鮮から「脱北」した「帰国者」を、このプロジェクトでは元「帰国者」と称する。そして、現在日本には200人あまりの元「帰国者」が住んでいる。彼らは、脱北した事実を隠す必要に迫られている。隠さないと日々の生活に困難をきたすためだ。

このような状況下で、実際に日本で暮らす脱北した元「帰国者」らに、琴をはじめとした3組のアーティストが会いに行く。元「帰国者」との対話をとおしてインスピレーションを培いながら、作品制作と展示へと繋げていく。それらの作品群は、2020年11月に東京北千住のギャラリーで発表され、わずか6日間の会期にもかかわらず大きな反響を得た。

本書では、展覧会で発表された作品とその記録を起点とし、外部の寄稿者による「朝露」プロジェクトへの応答を幾重にも編みながら、ディスカッションの輪を広げていくことを試みる。

展覧会出品作家

・琴仙姫

・竹川宣彰

・山本浩貴+高川和也

目次

『朝露』——記憶と記録へと向かう芸術的想像力|毛利嘉孝

朝露プロジェクト——深い空白への挑戦|琴 仙姫

ポストコロニアリズムの時代におけるソーシャリー・エンゲイジド・アート|山本浩貴

《朝露》についてのノート|岡田有美子

図版 | 作品解説

・「朝露」展示風景

・琴 仙姫《朝露 Morning Dew – The stigma of being “brainwashed”》

・竹川宣彰《トットリころころ》

・山本浩貴+高川和也《証言》

・展示資料スペース

さまざまな「夢」が繋ぐ「朝露」プロジェクト|近藤健一

「朝露」を思う——東アジアをほどく、作る、越える|松村美穂

洗脳と分断を解き、不条理と孤独から出奔する日まで|鄭 暎惠

語れなさについて| 島貫泰介

脆く儚いフレーム/生のあやうさ——琴仙姫の《朝露》に寄せて|レベッカ・ジェニソン

笹山大志・竹川宣彰オンライン対談(2021年3月17日)

山本浩貴+高川和也《証言》 ——現れを巡るいくつかの考察|崔 敬華

夢と現実の境界が自明性を失ったとき|高川和也

李静和からの応答

沈みゆく船たち|琴 仙姫

あとがき|琴 仙姫

〈付録〉Fragile Frames/Precarious Lives: Soni Kum’s Morning Dew | Rebecca Jennison

カバーイメージ:琴 仙姫《朝露 Morning Dew – The stigma of being “brainwashed”》より

出演:和座 彩

Next
Next

Still Hear the Wound: Toward an Asia, Politics, and Art to Come